いじめを受けて不登校になった子どもが、まず直面すること。
それは「学ぶ環境を失う」ことです。
学校に行けない期間が長くなればなるほど、その影響は大きくなりますよね。
高校生の息子がいじめを受けて不登校になり最も苦しんでいたのは、やはり学ぶ環境を失ったことでした。
当初は精神的に厳しい状況でしたが学習意欲はあり、
「進学はあきらめたくない」
と話していました。
自宅で勉強していましたが、自分で考えて勉強するのは思っている以上に大変ですよね。
どの教科も、何をどこまでやればいいのかわからない状況です。
授業は今、何をやっていて、どこまで進んでいるのかもわからない…
息子は自分で勉強しながらも、
「せめて授業が今、何をしているのかがわかればなぁ」
「課題とか出してくれないかなぁ」
と話していました。
学校は集団指導の場。
個別の対応が必要になる不登校の子どもの学習のサポートは、どこの学校も難しい状況だと思います。
息子が通う高校も、学習のサポート体制は整っていませんでした。
相談できる窓口は担任の先生です。
ただ、いじめ問題の対応で先生にはかなり負担をかけている中で、学習のサポートまではお願いしづらい状況でした。
当初はいじめ問題の聞き取り調査や息子の単位認定、出欠席の取り扱いに奔走してくれた先生でしたが、聞き取り調査が一段落し、息子の単位認定、出欠席の取り扱いについての方針が決まってからは、その方針をもとに学習のサポートをスタートしました。
息子は登校することを負担に感じていたので、学習のサポートについてはかなり配慮してもらったと思います。
まず、息子が登校しやすい場所、校舎内の移動がほとんどない個室を準備してもらえました。
そして、登校時間を他の生徒が下校した後の時間に設定し、時間外にもかかわらず授業に遅れないようにと丁寧に指導してもらいました。
息子は「先生は忙しいのになぁ」と遠慮しているところもありましたが、先生の指導を受けた日はとても嬉しそうでした。
授業内容の勉強ができる喜びはもちろん、質問することもできます。
そして、勉強だけではありません。
息子にとって先生と過ごす時間は社会との唯一の「つながり」であり、孤独感から解放され、安心できる時間だったのかなと思います。
息子はその時のことを「あれは本当にありがたかった」と言っています。
登校することに少し慣れた頃からは、学年主任の先生や各教科担当の先生も加わり、個別に指導をしてもらいました。
学習できる喜びとともに、先生方との交流によりいろんな話が聞けることを喜んでいました。
息子にとっては決して十分なサポート体制ではなかったと思います。
ただ、先生方の気持ちは息子にも私たち親にも伝わっていました。
このサポートにより息子は学ぶ環境を完全に失うことなく、社会とのつながりを感じることができたのではないかと思います。
サポート体制が整っていない中、先生方がこのようにできる限りの対応をしてくださったことに感謝しています。
ただ課題は盛りだくさんだと感じたことも事実です。
不登校の子どもへの学習サポートについては法律や学習指導要領、文科省の通知等に示されているにもかかわらず、現場ではなかなか実施することが難しい状況でした。
今後、学校現場の現状にあったサポート体制を考える必要があるのではないかと思います。
今すぐすべてを最高の状態にすることは難しいと思います。
課題はたくさんある中でも学校や先生方が「今できること」を考えて行動していくことで、より多くの子どもが救われるのではないかと思います。
先生方の「できる限りの対応」は私たち親子に希望を与えてくれました。