子どもがいじめを受けていることがわかり、学校が聞き取りをしていますが、
加害者もうちの子も核心部分は話していないような気がします。
どのように進めていけばいいでしょうか?
いじめはその内容も子どもの状態もそれぞれ。
どこまで、どんな調査をするのかは重要です。
親は「何があったのか事実を知りたい」と思いますが、子どもの様子をみて、相談しながらすすめる、という選択もあります。
我が子がいじめを受けていた、と知ったとき。
親は、
誰からどんないじめを受けていたのか
いつから受けていたのか
なぜうちの子がいじめのターゲットになったのか
など、たくさんの疑問がでてきます。
「何があったのか知りたい!」と思いますよね。
一般的には、徹底調査し、すべてを明らかにすることが望ましい、とされています。
また、近年は訴訟をするケースも増えているため、「全容解明」を強く求める方も多いのではないでしょうか。
ところが、いじめ問題のすべてを明らかにすることは容易ではありません。
今日は「いじめのすべてを明らかにしない選択」についてお伝えします。
いじめの調査は被害者や加害者、その関係者の証言が重要になってきますが、すべての情報を得ることはとても難しいです。
その理由は以下の3つ。
●被害者は、被害内容を話すことに苦痛を感じることがあり、話すことでもう一度、傷つくこともある。
●加害者は、そもそも「いじめ」の認識がないことも多いため、自分の行為の何が相手を傷つけたのかわかっていないことがある。また、事実を隠して言わないこともある。
●被害者が調査を嫌がるため、十分な調査ができない。
このような状況の中ですべてを明らかにしようとすると、負担の多くは被害を受けた子どもにかかることになります。
無理に進めて、かえって心の傷を深くしてしまうことも。
そもそも、いじめ問題の解決の目的は、被害を受けた子どもの「日常を取り戻すこと」です。
すべてを明らかにすることや責任の追及は重要なことですが、目的を果たすための一部にしか過ぎません。
いじめ問題を解決する上で、最も大切なのは被害を受けた子どもの心の回復です。
「今」すべてを明らかにすることが難しいときは、その他のできることから解決に向けたアプローチをしてみる、という選択もあります。
息子は当初、自分が話すことも加害者への聞き取りも拒否していました。
ただ、全く調査をしないわけにもいかないので、息子が安心して話せる環境づくりをし、先生と協力して、息子が話せる範囲で話してもらうことにしました。
加害者への聞き取りも、息子の意向を尊重し、先生が工夫して行ってくれました。
家族としては「すべてを明らかにしたい」思いはありました。
でも、当事者の息子の意向を軽視することはできないため、徹底調査は求めず「いじめ」と認定するために必要な調査に留める選択をしました。
結局、全容はわからず、核心部分もわからないままです。
そうなると、加害者に対して責任に見合った指導を強く求めることもできません。
これで良かったのか…
それはわかりません。
ただ、息子の心は少しずつ回復し、教室に戻り、新たな目標をみつけることができました。
問題解決の目的が「日常を取り戻すこと」であるならば、その目的は果たせた、と言えるでしょう。
誰にでも1つや2つ、誰にも言いたくないことがあると思います。
その「心の箱」を開けるのは「今」である必要はないのかもしれない、自分のタイミングで開けて向き合えばいいのかもしれない、そう思いました。
その時、もし助けが必要であれば、息子に寄り添い、また一緒に乗り越えていけたらいいな、と。
そんなことができる信頼関係を築いておきたいと思っています。